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2025.5.30

クッキーレス時代の広告運用:ファーストパーティデータ活用戦略とは?

2025年、Google ChromeにおけるサードパーティCookie完全廃止の実施によって、
広告運用の常識が大きく変わろうとしています。
これまでターゲティング広告の中心だったCookieベースの手法が使えなくなる中で、
今後の広告戦略で最も重要なのが「ファーストパーティデータ」の活用です。

本記事では、クッキーレス時代の背景からファーストパーティデータとは何か、
実践的な広告活用法、導入時の注意点までを詳しく解説します。

クッキーレス時代とは何か?背景と影響

サードパーティCookieとは?

ユーザーのWeb行動を“別ドメイン”から追跡するための仕組みです。
広告のリターゲティングやクロスサイトトラッキングの基盤として、長年利用されてきました。

なぜ廃止されるのか?

  • ユーザープライバシー保護の強化(GDPR、CCPAなどの法規制対応)
  • Apple(Safari)、Mozilla(Firefox)に続き、Google(Chrome)も完全廃止を発表
  • ブラウザレベルでサードパーティCookieの読み込みが不可能に

つまり、これからは「追いかける広告」ではなく「信頼関係に基づく広告」へシフトが必要。

ファーストパーティデータとは?

定義と特徴

ファーストパーティデータとは、企業が直接取得したユーザー情報のことです。

種類具体例
会員登録情報メールアドレス、氏名、生年月日など
購入履歴商品カテゴリ、金額、購入頻度など
サイト内行動滞在時間、閲覧ページ、クリック履歴
アンケート回答興味関心、悩み、目的、希望条件

ファーストパーティ vs サードパーティ vs ゼロパーティ

種類取得元利用範囲規制対応精度
ゼロパーティユーザーが明示的に提供個別対応◎◎
ファーストパーティ自社サイトで取得自社内のみ
サードパーティ他社から収集広範囲に共有

ファーストパーティデータを広告に活用する戦略設計

戦略①:カスタムオーディエンスでの広告配信

  • Webサイトでの購買データや行動履歴に基づいて、広告をセグメント配信
  • Google AdsやFacebook広告などで「カスタマーリスト」として活用可能

  • カート離脱者 → 商品リマインド広告
  • 高頻度購入者 → VIP限定キャンペーン告知

戦略②:類似オーディエンス(Lookalike)への拡張

  • 自社の優良顧客のデータを基に、同じ傾向を持つ新規層にリーチ
  • サードパーティCookieに依存せず精度の高い新規獲得が可能に

プラットフォーム例:Meta(旧Facebook)、Google、LINE広告

戦略③:データクリーンルームの活用

  • 自社のファーストパーティデータとプラットフォーマーのデータを安全に統合・分析
  • 例:Google Ads Data Hub、Amazon Marketing Cloud、Yahoo! Clean Room

プライバシーを保ちながら、複合的なデータ分析や広告効果測定が可能

戦略④:MA・CRMと連動した広告配信

  • メールマーケティングやLINE配信と広告を一貫した設計に
  • ユーザーの行動(開封・クリック)に応じて広告の出し分けが可能

「広告」ではなく「体験」としての接触設計がカギ

ファーストパーティデータ取得のための実践施策

フォーム最適化と登録UX向上

  • 最小限の入力項目+ステップ形式
  • SNS連携ログインによるストレス削減

コンテンツマーケティングと連携

  • ホワイトペーパーDLやセミナー参加でのリード取得
  • 記事閲覧履歴から興味分野を特定し、広告配信に反映

診断コンテンツの活用(ゼロパーティ化)

  • 「あなたにおすすめの商品診断」「タイプ別戦略診断」など
  • 興味・志向を“自発的に入力してもらう”導線設計

Cookieなしでもトラッキング可能な仕組み導入

  • Google Tag(GA4)+サーバーサイド設定
  • Consent Mode・First-Party CookieベースのコンバージョンAPI対応(Facebookなど)

効果測定と改善のポイント

サードパーティCookieなしでは、広告効果の計測も見直しが必要です。

新しい指標管理手法

観点方法
コンバージョン測定サーバーサイド計測、コンバージョンAPI、Consent Mode
アトリビューションMMM(マーケティングミックスモデリング)の導入
分析ツールGA4、Looker Studio、HubSpot、Salesforce などと連携

「何が効いたか」を“推測”するのではなく、“統合分析”で把握する時代へ

ファーストパーティデータ活用の成功事例

▶ D2CブランドA社(ファッション)

  • 会員登録時に好みのカラー・サイズ・スタイルを収集
  • メール+広告でのおすすめ商品表示をパーソナライズ
  • CVR:1.7倍、離脱率:30%改善

▶ BtoB企業B社(SaaS)

  • 資料DLフォームで業種・課題を取得
  • 導入事例を属性に応じて広告・LPで自動出し分け
  • 商談化率が1.8倍に改善

ファーストパーティデータ活用の課題と注意点

プライバシー保護と取得許可の明示

  • 利用目的の明記、オプトインの徹底
  • プライバシーポリシーの整備

データクレンジング・統合基盤の構築

  • 重複・欠損・分断されたデータを統合
  • CDP(Customer Data Platform)の導入も検討

社内リテラシーと連携体制

  • 広告チーム・CRMチーム・営業部門などの連携が不可欠
  • 共通KPIの設計とダッシュボード整備が必要

まとめ:クッキーレス時代の広告運用は「信頼と価値の交換」が前提

サードパーティCookieが使えないから広告ができない…ではなく、
ユーザーの信頼を得て、価値ある情報を提供することでデータを獲得・活用する」
のが今後のスタンダードです。

ファーストパーティデータは、企業にとって“資産”であると同時に、
ユーザーにとっての“信頼の証”でもあります。
広告の主導権は、企業ではなくユーザーにある──その時代に、
いかに誠実に、そして戦略的に向き合えるかが問われているのです。